時として、無性に読みたくなる本があります。
今もそうです。読もうかどうかと迷ってます。
その本がロマン・ロラン著『ジャン・クリストフ』です。
初めて読んだのは高校3年、大学受験が終わった時に読みました。それから、全部を読んだのは5、6回くらいでしょうか。
私の一番好きな小説で、この本を読んでいる時間は至福のひとときなのです。
だったら読むのに迷うことはなさそうなのですが、とにかく長い。
岩波文庫で全4巻、合計2,300ページくらいあります(笑)
ジャン・クリストフ 1 改版 (岩波文庫 赤 555-1) | |
おすすめ平均 見直されるべき名作 時代と戦いし者 いかなる日もクリストフの顔をながめよ うほほっ?!(;’Д`)ハァハァ 真の英雄とは? by G-Tools |
ロマン・ロランという作家は、あまりご存知ない方も多いのですが、かつてノーベル文学賞も受賞され、『ジャン・クリストフ』も文学全集などにはよく含まれていたりします。
私がロマン・ロランを知ったのは、ある本でこの方の言葉として、次のようなものが紹介されてたからです。
人生にただ一つの勇気がある。
それは運命をあるがままにみて、これを愛することである。
この言葉について書いていると、一記事では収まらないほどあるので、後日にします・・・。
でも、この言葉に出会って、ロマン・ロランってどんな人なんだろうと調べました。
すると、私の大好きなベートーヴェンの研究者でもあったのです。
そして、ベートーヴェンをメインのモデルにして、トルストイ、ミケランジェロ、この3人の生き方、思想を取り入れた小説、それが『ジャン・クリストフ』なのです。
ジャン・クリストフというのは、架空の人物、主人公の名前です。
全編はクリストフの誕生から晩年までが描かれています。
音楽家の家庭に生まれ育ち、自らも音楽家となります。でも、その過程は様々な苦悩や葛藤に満ちたものなのです。
私が好きな登場人物の一人は、クリストフの叔父、ゴットフリートです。行商人として旅の生活をしているのですが、ふとした時にクリストフの前に現れます。それはクリストフが何かに葛藤しているとき。
そして、その都度クリストフを慰め、勇気付けていくのです。その際のやりとりの言葉の一つ一つが本当に素晴らしいです。
あまり暴露してしまうと、読まれる方の楽しみを奪うので、一つだけ紹介しましょう。
日の出にたいして、信心深くなければいけない。一年後のことを、十年後のことを、考えてはいけない。
<中略>
なぜできもしないことをあくせくするんだい?
できることをしなければいけない… 我が為し得る程度を。
<中略>
お前は傲慢だ。英雄になりたがってる。それだから馬鹿なまねしかやれないんだ…。
英雄!…私はそれがどんなものだかよく知らない。しかしだね、私が想像すると、英雄というのは、自分にできることをする人だ。
どんな偉人、英雄であっても、自分にできないことをした人は誰もいませんよね。なのに自分にできないことに葛藤して、時間を費やしてしまうことが、私にも多いです。
読み直す度に、また別の言葉や台詞が気に入ってしまったりもします。
これだけの長編を、何度が読んでると、クリストフが親しい人に思えてきたりします。自分自身、何かに迷ったとき、クリストフならどうするだろうと考えてしまうのです。
この本を何度か読んで、ふと感じたこと・・・
『もしも人間の魂を動物に例えるならば、それは苦悩を餌として成長するのかもしれない』