トロイメライ ~音楽の風景(1)~

今週から、この日曜日バージョンでは色々な曲と、それにちなんだ話題をお届けします。
第1曲目は、シューマン作曲の『トロイメライ』です。13曲からなるピアノ曲集『子供の情景』の7曲目で、夢という意味があるそうです。
2分ちょっとの短い曲ですが、皆さんもどこかで耳にしたことがあると思います。


私にとってこの曲は、音楽の奥深さ、そして面白さを教えてくれた曲です。
音楽部に所属していた中学2年の時、音楽祭に向けてこの曲を練習していました。
私の場合、今は無理かもしれませんが、当時は右手は普通にピアノを弾いていました。ただ、左手の方は障害の度合いが強く、人指し指のみを使ってたのです。
普通は10本の指で弾くようにピアノ曲は作られています。ですから、左のパートが簡単な曲やアレンジによって対応出来そうな曲を選んで練習していました。
この『トロイメライ』という曲も、左のパートの音を一部省略したり、右手に持っていったりすることによって弾けるようになりました。
ゆったりとした曲なので、楽譜も1ページしかありません。
1ヶ月ほどの練習で、弾けるようになり、得意顔で顧問の先生に聴いてもらいました。
その時に先生から言われた言葉は、
「間違わずに弾くことだったら、ロボットにも出来ます。今聴いていて、何も伝わってきませんでした。」
音楽を通して、何かを伝える。
そのことが少しずつ分かるようになるまでに、随分時間がかかりました。
私としては、もう十分弾けるつもりでいる曲を、何度も練習するのは苦痛でした。
それでも、少しずつ、先生が仰りたいことが見えてくるにつれ、音楽が好きになっていったのです。


そんな出来事から1年くらい経った頃、地元出身のピアニストのリサイタルに行きました。
そのリサイタルのアンコール曲として、『トロイメライ』を聴くことができました。
すでに1年以上弾いてきた曲。なのに、まだまだ上があるということを知りました。
当時の私にとって、思うようにならない左手、そして右手もあまり難度の高い曲は無理です。そんなことがコンプレックスにもなっていました。
でも、このリサイタルによって、自分が弾ける曲で上を目指すことができるという大きな発見があったのです。


そんなことに気づくことが出来た私は、ピアノ、そして音楽が好きになっていきました。
楽譜を完全に暗譜するくらいに弾き込んだ曲でも、その時の心理状態などによって違う曲になったり、新しい発見があったりします。
いわば、ゴールのない世界です。
衝撃のリサイタルから数年後、高校の時に『トロイメライ』の更なる衝撃がありました。
今は亡き名ピアニスト、ホロビッツのCDでこの曲を聴いた時のことです。
楽譜の隅々まで頭に入っている曲なのに、全く別の曲のように感じられました。といっても、アレンジをしている訳ではありません。使用している楽譜は、私が持っているものと同じです。
中学の時のリサイタルでは、「この部分をこういう風に弾けば、こうなるんだ」というように、目標が見えたという感じでした。
でも、ホロビッツの場合、どこがどうかというものではなかったのです。この曲が演奏者によって、ここまで違うのかと、本当に驚きました。
それと同時に、何十年かかってでも、こういった演奏ができるようになりたいという、一つの夢が私の中に生まれました…。


YouTubeで、ホロビッツの弾く『トロイメライ』を見つけました(^-^)!

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